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これより先のコンテンツは、まず神経症性障害のカテゴリに一度目を通されてから読み進めることをお勧めします。 心身症とは、身体疾患でありながら、その成り立ち、あるいは増悪に心理・社会的要因が関与しているとされているものです。このブログでは、「脳の中のストレス(エネルギー)を脳の中だけで処理することができなくなってしまったから、やむを得ず、身体に症状を起こすことでエネルギーを処理している状態」と表します。具体的には、アトピー皮膚炎・円形脱毛症・慢性蕁麻疹・気管支喘息・関節リウマチ・高血圧・消化性潰瘍・甲状腺機能亢進症・糖尿病・頭痛・めまい・耳鳴り・・・などなど様々な疾患が挙げられます。(一応専門書からの引用です。私の思いつきではありませんので・・) しかし、これらの疾患は実際に身体に何らかの異常が起きているわけですから、身体科を受診します。そして、大部分の方々は精神科にかかることはないでしょう。(「心療内科」は、もともと、このような心身症の方の治療目的で立ち上がった科ですが、現在はうつや摂食障害等、「精神科的な問題があることはわかっているが、精神科にはかかりたくない」という方が受診しているケースがほとんどです。以前勤めていた病院の心療内科は、完全に「第二精神科」と化していました。)もちろん、すべての身体疾患が「ストレス」と関連しているという暴論を掲げるつもりもありませんし、身体的な治療の必要性を否定するつもりもありませんが、身体科に長くかかっているものの、なかなか良くならずにくすぶっている方の疾患の「エネルギー源」は、実は「脳」だった。ということは、思ったよりも多いのではないかと考えています。 と、大きなことを言いながらも、今の精神科事情で、心身症の患者さんまで精神科が引き受けるとなると、とてもとてもまともな診療ができる自信もありません。そこで、身体科の医療従事者の方、あるいは患者さんや家族の方に、身体の治療を併用しつつ、以下のような視点も取り入れていただけると、何らかの参考になるのでは、と思います。 ひとつの物語を例に挙げてみます。 学校生活に何らかの問題を抱え、「とりあえずその場から離れ、今後のことについて自分なりに作戦を立てたい」という欲求が強まってきている子がいました。 しかし、その子の両親は「学校をずる休みするなんて、もってのほかだ」、という価値観を持っていたため、その子の「離れたい」という欲求と喧嘩(葛藤)が起きるようになりました。 それでも、「ストレスの器」に余裕があるうちは、何とか学校に通うことができていました。 しかし、ある時「ストレスの器」からストレスがこぼれそうだ(限界だ)という事をうすうす感づいたその子は、両親の価値観と自分の欲求との折り合いをつけるため、「おなかが痛い!」と「仮病」を使うことを考えつき、ある日それを実行に移してみました。 すると残念なことに、演技であることが両親にばれ、「この子は嘘をつく、とんでもない子だ。」ということになり、無理矢理でも学校に連れて行かされることになってしまいました。 そんななか、ついに「ストレスの器」からストレスが溢れてしまいました。すると、あふれたストレスを急速に処理する為、「脳」は実際に「おなかの痛み」を起こすことで、学校へ行かせないようにしました。(後程説明しますが、ここが「心気症」の段階です) あまりの痛がり様に、両親は「これは演技ではない」と思い、学校を休ませ胃腸科を受診させました。しかし、内視鏡検査をしてみても結局異常は見られず、医者から「気の持ちようですね」と言われました。 両親は、「こんなに気持ちの弱い子は、もっと鍛えなくてはダメだ」ということになり、おなかを痛がる子を、それでも無理矢理学校に連れて行きました。 そしてある時、その子は「胃潰瘍」で吐血をし、入院を余儀なくされてしまったのです。 その子の抱えていた問題そのものが解決されれば、「その場を離れる」必要も無くなりますから、これ以上器にストレスが溜まらなくなり、胃潰瘍は再発しませんが、問題そのものが一切解決されていない状態で、ただ胃潰瘍の治療だけを行っていたとしても、入院という形で「その場から離れる」欲求が満たされているうちは症状は良くなるものの、いざ「良くなってしまえば」再びストレスが上から降りかかる環境に戻らなければなりません。結果「胃潰瘍の再発」が起きる可能性はとても高くなることでしょう。 文面が長くなってしまいました。胃潰瘍という症状が、すべて人にとって「この場を離れたい」という欲求の表れである、ということを言いたいわけではありません。しかし、特に小さいお子さんの考える「工夫」というのは型にはまったものが多く、他にも、喘息・アトピー等の症状に暗に含まれる「欲求」は大体似通ったものである印象を受けます。喘息、アトピーについては次回取り上げたいと思います。 (追記) ところで、胃潰瘍の発生には「ピロリ菌」の関係が示唆されています。「ストレスなんて関係ない。問題はピロリ菌だよ。」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。私もその考え自体に反対する気はないのですが、以前私が診ていた”うつ”の患者さんが、ある程度良くなってから「ピロリ菌を除去してもらったら、ストレスが『胃潰瘍』という形で解消されなくなった。それから自分はうつになったような気がする。」と話されたことがあり、妙に納得したことがありました。根本的な問題が解決されずに、疾患だけを良くしても、行き場の無くなったエネルギーは「もぐら叩き」のように別の臓器に波及するのかもしれません。あと、これは私のあくまでも個人的な意見でエビデンスも何もあったものではないのですが、薬の副作用が出やすい方にも同様の傾向があるように思えるのですが、どうなんでしょう・・・
by k-naruwo
| 2004-08-27 12:43
| 各論3-1 心身症
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