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それでは、疾患の成り立ちについてです。 まず、車の製造過程、つまり遺伝的な問題について考えていきます。 私は患者さんやご家族に対して、統合失調症の方に元々備わっている車体(脳)の特徴を「F1カーのエンジンに、普通乗用車のブレーキがついた自動車」と説明しています。頭を忙しくすることはできるものの、いざ落ち着かせようとしてもなかなか落ち着いてくれない車体(脳)であり、頭を働かせる毎にブレーキに知らず知らずのうちに負担をかけてしまう傾向が元々あったと考えるのです。そのように捉えた場合、遺伝的にはエンジン側の問題と、ブレーキ側の問題両方を考慮に入れる必要が出てきます。遺伝的に優れたエンジンを持っている人は、そのエンジンに相応しいブレーキを同時に備えていなければ、どこかでブレーキが破綻するかもしれません。その一方で、元々ブレーキの働きが弱い遺伝子を備えていても、エンジンがそのブレーキに負担がかからない程度のものであれば、発病のリスクは低いでしょう。このような「エンジンとブレーキのアンバランスさ」を基盤として持つ方が多く、その上で運転手(こころ)の運転のあり方、走る道(環境)の選び方が発病に関連してくると考えられます。 このような「エンジンとブレーキのアンバランスさ」のある車体(脳)を持っている方は、実は小さい頃から自分が「頭が落ち着かない傾向」があることを知っていらっしゃる方が多いようです。なるべく頭を忙しくさせない生活を普段から心がけ、自分なりに脳を守っていたものの、環境の変化などで脳に過剰に負担がかかってしまった結果発病に至った方が多い印象を受けます。 「頭を忙しくさせない生活」とは、一言で表せば「答えの出る生活」です。よく「勉強をやりすぎて病気になってしまった」という話がありますが、学校の勉強に限って言えばそれは当てはまりません。なぜなら学校の勉強には必ず「答え」があるからです。問題が解けなくても、答えを見れば「ああ、そうか」とスッキリすることができるのです。学校の勉強の中でも、国語のように出題者の意図によって答えが微妙に変わるものよりも、数学や物理のように1つの答えがスッキリと導き出せるものを好む傾向があるようです。 反対に「頭が忙しくなる生活」とは何でしょうか。代表的なものが「人間関係」です。人間関係は答えが出ないまま、そのままにしておかなくてはならないことも数多く、そのことが頭が忙しくなりがちな方を苦しめます。 簡単な例を挙げます。 先日学校で、AさんはBさんに「おはよう」と挨拶したところ、Bさんから笑顔で「おはよう」と返ってきました。ところが、今日同じようにAさんはBさんに挨拶したところ、Bさんはムスッとした顔で返事もせず通り過ぎていきました。 さて、なぜ今日に限ってBさんはAさんに返事をしなかったのでしょうか? 「挨拶の仕方が悪かったのかな?あるいはBさんの機嫌が悪かったのかな?機嫌が悪いのだとしたら一体何があったのだろう?ひょっとして私が原因?私、Bさんの悪口言ったことなんてあったっけ?それとも・・・?」 機嫌が悪い人にその原因を聞きだすのもためらわれます。ひょっとすると、Bさん自身も何故自分が機嫌が悪いのかわからないのかもしれません。Aさんは勇気を出してBさんに聞き出そうとしてみましたが、Bさんにしてみると、自分にもわからないことで答えを求められても困ります。イライラしたBさんは最後に「お前がしつこいからイライラするんだよ!」と叫んでしまいました。「???」・・・このような出来事を、ただそのままにしておくということは「スッキリ」しないものです。人間関係は、そのような「答えの出ないもの」に満ち溢れています。 また、もともと頭の忙しさを持つ方は、人とのコミュニケーションにおいて「言葉の内容」の部分と、それ以外のノンバーバルな部分の情報に、微妙なズレがあることを敏感に感じ取る方が多いようです。言葉では「大好きだよ」と言っているのに、その声や表情から「違ったもの」を感じ取ってしまい「一体どっちなんだろう?」と悩んでしまうのです。そのようなズレについて考えることに疲れてしまうため、今度はすべて相手の言っている言葉の「内容」の部分だけでしか判断しなくなってしまいます。「いやよいやよも好きのうち」という言葉がありますが、相手から「いや」と言われると、そこに含まれる別の情報を感じ取ることができず、「あ、ゴメン」とそこで止まってしまいます。その気になっていた相手からは「女の気持ちがわからない人ね!」「???」・・・と、相手からはむしろ「鈍感な人」と思われてしまう方もよくいらっしゃいます。 このように人間関係とは厄介なものですから、可能な限り人との関わりは避けて過ごすことで、何とかバランスを保っていたにも拘らず、そのような方が「答えの出ない」環境に長く身を置くざるを得なくなった結果、発病に至ってしまうことがとても多いのです。具体的には、受験勉強を黙々とこなし、大学入学後に人間関係に対しても受験勉強と同じように「答え」を求め調子を崩された方、人と関わる仕事ではなく、機械や試験管と向き合うような仕事に就くことで何とかバランスを保っていたにも拘らず、能力を評価され、人との関わりがメインとなる管理職に抜擢されてから調子を崩された方などです。もともと、ブレーキのネジが緩みがちだった状態で、急な坂道となり、急ブレーキを踏んだ途端にブレーキそのものが外れてしまったような形で発病されるのです。 それでは、脳のブレーキが利かなくなってしまうと、どのようなことが起きてくるのでしょうか。次回説明していきます。
by k-naruwo
| 2005-02-13 13:26
| 各論4 統合失調症
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