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相変わらず患者さんに対しては自動車のモデルを用いた疾患の説明を行っています。しかし、最近になって説明の方向性が少しずつ変わってきています。うまく言葉にできなかったためブログには載せられなかったのですが、いくらか表現できそうな気がしてきたので、総論の補足として今回説明を追加したいと思います。 簡単に言うと、こんな説明を行うことが増えてきています。 レーシングカーのような車体(脳)を持っている人が山道を走れば故障しやすい。 RVカーのような車体(脳)を持っている人がサーキット場を走れば故障しやすい。 これは、神田橋條治先生が常々言っていらっしゃる「鵜は鵜のように、烏(カラス)は烏のように」ということと何ら変わりないのですが、私個人は車の例えの方がイメージが湧きやすいので、こちらの例えになっています。 レーシングカーを走らせるには、サーキット場という環境が最もその車体の資質を発揮するわけですが、生まれつきそのような資質を持つ人が「車というのは、山道を走らせてなんぼだ。」あるいは「車というのは、道路渋滞のノロノロ運転も平気でできなければならない。」といった価値観を持つ親に育てられたとすれば、元々その人自身を運転させるマニュアルそのものが、資質にあっていないことになります。となると、その人は親から植えつけられたマニュアルで自分自身を運転させることを忠実に守ろうとすれば守ろうとするほど調子が悪くなる、という困った事態が生じてきます。 このような状況に対して、「走らせる道が違っているのかも」と柔軟に考えられることはめったにありません。大抵は「お前(私)の努力が足りないのだ。」「もっと頑張れば、立派に山道でも走れるようになるはずだ。」というように、既存のマニュアルを徹底させるような方向に進むでしょう。そのような誤った方向の努力の結果、これ以上資質に合わない運転を続けていることに対して車体(脳)が「これ以上同じ運転を続けることはもう限界です!」と悲鳴を上げている状態を「病」と呼ぶことにするのです。 さて、そのように「病」を捉えた場合、例えばF1カーのような車体(脳)の資質を持っている人が、「山道を走ろうとすると調子が悪くなるので、山道でも普通に走れるようになりたい」という訴えで病院を訪れたとします。ここで、患者さんの訴えに忠実に従うとすれば、治療者は患者さんの脳の資質を薬によって「殺す」必要が出てきます。F1カーのような脳を、「国産のスポーツカー」程度になるように脳の働きを鈍くすることによって、確かにその患者さんは山道でも何とか走れるようになるかもしれませんし、そうすることで治療者は患者さんにも家族にも喜ばれることもあるでしょう。しかし、このような患者さんから「いつまで薬を飲んでいればいいのですか?」と尋ねられたら、治療者はどう答えればいいでしょうか?もしこの患者さん、家族が「車というのは、山道を走れてなんぼだ」という価値観を抱き続けているのであれば、この患者さんは、亡くなるまでの間ずっと薬を飲み続けなければならないでしょう。 ところで、もしこの患者さんが「山道を走るスペシャリストになりたい」と願っており、そのように生きることを「自己実現」と捉えているとします。当然、この患者さんにとってその「自己実現」は達成されることはなく、むしろそうなりたいという強い希望を持つが故に薬を飲み続けなければならないわけですが、そこに、この患者さんの「F1カー」としての資質を存分に引き継いだ子供が生まれたとします。「俺が果たせなかった山道のスペシャリストとしての夢を、子供に託すことにしよう」・・・このように育てられた子がどうなっていくのか・・・想像すると、少し怖いですね。 別の例も考えられます。「F1カー」のような資質を持った人が、幸いにもその資質を生かせる「サーキット場」という環境の中で過ごし、大成功を収めたとします。「自分と同じような生き方をすれば、誰でも成功するに違いない。」とその人は考えていますが、子供はむしろ配偶者側の資質を引き継いで「RVカー」のような車体(脳)でした。その子に対して「自分の成功ノウハウ」を押し付けるような養育を行なっていったとしたら・・・ いずれにせよ、どちらの例も、自らの資質を選ぼうとすれば、(少なくとも片方の)親からは認めてもらえず、自らの資質とは合わない親の運転マニュアルを選ぼうとすれば、自らの資質がそれを許さないという板ばさみの苦しさを、子は味わうことになることでしょう。 ▲
by k-naruwo
| 2006-12-14 00:25
| 心の病をこう見てみよう―総論―
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